fibona Lab

「美容液で洗う」という新習慣。朝洗顔の価値が変わる、fibonaの「洗顔セラム」ができるまで

2025.08.07

「美容液で洗う」という新習慣。朝洗顔の価値が変わる、fibonaの「洗顔セラム」ができるまで

資生堂研究所のオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」は、「世の中にない」を共創するビューティープロダクツとして、2025年4月に新たに“洗うタイプの美容液”「洗顔セラム」をローンチした。

「洗うこと」が肌のうるおいにつながる──。そんな発想から生まれたこの洗顔セラムは、朝洗顔の概念を書き換えていくものだ。

なぜ「朝に美容液で洗う」という発想と技術は生まれたのか。どのように朝洗顔による肌の変化を実証へと導いたのか。そして、このプロダクトで研究員が目指す「洗顔のその先」にある新習慣とは?

プロジェクトメンバーで価値開発を手がけた伊藤瑠璃子(以下、伊藤瑠)、基剤開発を担った伊藤愛、有用性担当の金谷匠人の研究者3人に話を聞いた。

 

水洗顔でいいの? 朝洗顔の価値を変えるために

──「洗顔セラム」プロジェクトでの、みなさんの役割について教えてください。

伊藤瑠:
私は、「洗顔セラム」の商品の方向性を設計する価値開発を担当しました。この商品の持つ価値やお客さまに届けたいメッセージをどのような形で表現し、お伝えしていくかをユーザー視点で設計していく業務です。また、洗顔セラムによって形成される、うるおいベールの構成成分をコンセプトと照らし合わせながら選定しました。

伊藤愛:
普段は、洗顔料やボディクリームなどの製品開発をしている伊藤です。「洗顔セラム」では、資生堂の技術「滴膜乳化技術」を用いた基剤開発を担当しました。

金谷:
私は研究所の中でも、製品の有用性試験や効果検証を専門としています。この「洗顔セラム」が設計した通りの効果があるのかを検証する有用性担当としてこのプロジェクトに携わりました。

──「洗顔セラム」が生まれた背景を教えてください。

伊藤瑠:
数年前、リニューアル前のShiseido Beauty Park(旧S/PARK)の取り組みで、研究員がお客さまの肌の測定とカウンセリングを行っていたのですが、「朝は水洗顔だけ」という方が非常に多いことに気づきました。

皆さん、朝に洗顔しないのは「乾燥肌だから」「皮脂を取りすぎたくないから」とおっしゃる。でも実際の肌状態は、皮脂だけでなく、水分量も少なくてバランス悪かったり、汚れがあったり、角層やキメの乱れが見られる方が多かったんです。そのことから肌を守っているつもりが、かえって不調を招いているのではと感じました。

また、汚れを落とすことをメインとした従来の洗顔では、「肌を洗う」という行為自体に、多少なりとも肌へ負担をかけるのではないか、という不安を抱えている人が少なくないことにも気づきました。ならば、その価値をまるごと変えてしまうような商品をつくりたい──そう思ったのがきっかけです。

──この商品は最初から「洗顔料」ではないものとして設計されたそうですね。

伊藤瑠:
パッケージには「洗うタイプの美容液」と明記していますが、この商品は、汚れを落とすためだけのものではありません。「洗う=取り除く」から、「洗う=与える」へ、肌にとってプラスになる朝洗顔の新たな習慣づくりを目指したプロダクトです。

今回の挑戦は、fibonaが“世の中にまだないもの”をつくる場所だからこそできたと思っています。

洗いながら、肌がうるおう「滴膜乳化技術」

──この「洗うタイプの美容液」に欠かせない技術が「滴膜乳化技術」なのですね。

伊藤愛:
はい。「洗い流しながら、肌に良いものを与える」というのは、相反する印象があると思います。それを叶えるための技術が、資生堂の技術である「滴膜乳化技術」です。今回、「洗い流す商品」として初めて使われました。

この技術のすごさは、美容成分でもある油滴(油分の粒子)の膜が薄くなることで、油滴のサイズをとても小さくできること。これにより高密度な油滴の配合が可能になるだけでなく、角層の隙間に油滴がいきわたり、美容成分がすみずみまで馴染んでいきます。

さらに、肌になじませて水で洗い流すときに“再乳化”することで、肌に残したいうるおいは残し、不要なものをやさしく除去してくれます。つまり洗い流してすっきりするのに、しっとりした肌になるんです。

──乳液のようなテクスチャーで肌なじみがよく、使い心地がいいなと感じました。

伊藤愛:
一般的に油分が増えるほどテクスチャーがどんどん固くなっていくため、油分を多く含みながらも、とろみを保ち、肌への伸ばしやすさを損なわないバランスを見つけるのが一番の難所でした。
何度も試作を繰り返し、絶妙なとろみと浸透感を保つことに成功しました。

この「滴膜乳化技術」を洗顔に応用するという話は、実は「洗顔セラム」プロジェクトの前から話があり、試行錯誤を繰り返してきました。その期間を合わせると今回の商品化にたどり着くまでには、およそ5年の年月がかかっているんです。

伊藤瑠:
やはり摩擦は肌にとっては大きな負担で、しみ、しわ、たるみの原因にもなります。朝洗顔は毎日のことなので、伸ばしやすいテクスチャーもこだわりのひとつです。

洗い流しすぎてしまうと肌に浸透した美容成分も一緒に落ちてしまうので、セラムを肌になじませたら、ゴシゴシ洗い流さず、うるおいのベールを残すイメージで、そっと水でなでるように数回流すだけで十分です。はじめはそれまでの洗顔習慣の癖で最後まで洗い流したくなる人もいるかと思います。ただ、新しい価値観の商品を使うときは、使い方もアップデートすることが大事なので、日々洗い流し回数を少しずつ減らしてベストな回数を見つけるなどの工夫をしていただけたらと思います。洗い終わった後の、肌の感覚をぜひ体験していただきたいです。

朝洗顔で「肌がうるおう」をデータで証明

──プロトタイプで有用性試験も行ったんですよね。

伊藤瑠:
「滴膜乳化技術」を洗う商品に応用したとき、実際に使えば使うほど、よりうるおいに満ちた肌になるかのデータを取りたいと思っていました。一般的には洗い流す商品で、肌がいい方向に変わっていくことまでは期待しないと思います。

ですが、しっかりデータをとってこの効果を証明してお客さまにお伝えしたいと感じ、金谷さんにお声がけしました。

金谷:
私も、実際に効果を検証できればと思っていました。今ある洗顔商品は、“肌のうるおいを奪わない”ことを訴求することが多いと思いますが、「滴膜乳化技術」を応用したプロトタイプは“肌にうるおいを与える”というプラスの変化まで期待できるポテンシャルをもっていると感じていたからです。

約1カ月間、20代から50代の女性のお客さまにモニターをお願いし、朝、洗顔の際にプロトタイプを使っていただき、 肌がどう変わったか第三者機関に測定を委託してデータを集めました。 その結果、ポジティブな変化が明確に表れたんです。

まず肌の水分量が日を追うごとに上昇し、その水分を保持するバリア機能も改善がみられました 。また、肌が柔らかくなめらかになり、キメが整っていきました。 洗顔料ではなく美容液だからこそ得られる、土台から整う変化を検証できたと思っています。

──朝の洗顔の習慣を変えるだけでそんなに効果があるとは驚きです。実際に使用した方からの感想はどうでしたか?

金谷:
モニターになっていただいたみなさんに、うるおいなど、お肌の変化を伺ったところ、いずれの項目も「実感している」と回答いただきました。

伊藤瑠:
金谷さんからデータを見せてもらったとき、やっぱりそうかと思いました。私自身、プロトタイプを1カ月、2カ月と使ってきて、肌が柔らかくなり、キメが整ってきたことを感じていたんです。

伊藤愛:
私もデータでしっかり効果が出ていることがわかって嬉しくなりました。洗い流したあとでも、ここまで肌がうるおうものは、商品として本当に初めてだと思うので、その点をしっかり伝えていくことの自信にもなりました。

Shiseido Beauty Parkで「洗顔セラム」を体験した方の声

Shiseido Beauty Parkで「洗顔セラム」を体験した方の声

―使い続けることでより効果を実感できそうですね。

伊藤愛:
この洗顔セラムを使うと、美容成分が肌にしっかり入っていく実感があります。ただ、それは1回使えばずっと続くというものではなくて、使い続けることで徐々に肌になじみ、肌そのものが元気になっていく感覚です。回数を重ねることで、うるおいが定着しやすくなり、肌の状態が安定していくようにおもいます。

伊藤瑠:
私のイメージでは、肌の“土台の基礎力”が日に日にぐっと上がる感覚ですね。うるおいに満ちた肌は、外的ダメージも受けにくくなりますし、ターンオーバーの流れも自然と整っていくように思います。水洗顔ではできない価値を実現できました。

しかも敏感肌、乾燥肌、脂性肌、混合肌と、どんな肌質の方にも使っていただけるところもポイントです。使い続けるほど肌のバランスを自ら整えてくれるような、頼もしい存在です。

「洗う美容液」が拓く、朝洗顔という新習慣

――最後に、「洗顔セラム」を通じてどんな体験を届けたいのか。今後の展望も含めてお聞かせください。

伊藤瑠:
ずばり言います。私は水洗顔を撲滅したいです(笑)。そう思ったのは、この商品の価値を知ってしまったからです。

「肌、なんかイマイチなんだよな」と漠然と思っている方、あるいは「今の肌に不満はないけど、もっと整う余地があるんじゃないか」と感じている方にも。“肌が毎日アップデートされていく”という感覚を、楽しんでほしいです。

また、お客さまの声を取り入れてプロダクトを一緒につくり上げていけるところもfibonaのよさなので、お客さまからの「こういうふうに使ったらよかった」というお声があれば、私たちも柔軟に取り入れて、またそこから商品をアップデートしていきたいと思っています。

伊藤愛:
私自身、大学生の頃はお湯だけで顔を洗っていました。洗顔料を使うのが面倒で、「正直、変わらないでしょ」と思っていたんです。でも、このセラムを使うようになって朝の洗顔ひとつで、日中の肌の心地よさも、メイクの持ちも全然違うことに気がつきました。

それを実感したからこそ、もっと多くの方にこの感覚を知ってほしいと思っています。「落とす」ための洗顔ではなく、「与え続ける」洗顔。朝のケアが一日を支えてくれることを、ぜひ体験してほしいです。

金谷:
今、いわゆる“洗顔難民”のような方が増えていると感じています。自分に合う洗顔料が見つからず、悩んでいる方も多い。そんな方にこそ、この商品を届けたいです。

fibonaだからかたちにできた「洗顔料」というカテゴリーにおさまらない、まったく新しい“洗う美容液”。これまでの洗顔習慣にとらわれず、まずは一度、肌で確かめてみてほしいです。そして「洗顔だけで、肌ってこんなに変わるんだ」という体験を、味わっていただけたら嬉しいです。