fibona Lab

資生堂研究員と生活者が“共創”するコミュニティ、
「Club fibona」の挑戦とこれから

2026.03.18

資生堂研究員と生活者が“共創”するコミュニティ、
「Club fibona」の挑戦とこれから

資生堂研究所のオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」。そのブランドコンセプトである「世の中にない・共創・未完成」を体現する場のひとつが、2025年5月に立ち上がったオンラインコミュニティ「Club fibona(クラブ・フィボナ)」だ。
資生堂研究員と共に「新しい美の可能性」を探求するコミュニティとして誕生したClub fibonaは、いまどのような「共創」の場に育っているのか。
立ち上げから運営をリードするfibonaメンバーの小堀弘樹と、外部パートナーとしてコミュニティ設計を支えるコミューン株式会社コミュニティマーケティングセクション マネージャーの江崎稜海氏に、これまでの歩みと目指すべきコミュニティの姿を聞いた。

研究成果の社会実装を加速させる「コミュニティ」

 

——fibonaのオンラインコミュニティ「Club fibona」が誕生した背景について教えてください。

 

小堀:
fibonaは「世の中にはない・共創・未完成」という3つのテーマを掲げ、常に前例のないチャレンジを続けています。2025年1月にはShiseido Beauty Park(SBP)がリニューアルオープンし、研究成果をいかに社会に実装していくかというフェーズに入りました。その際、共創をさらに加速させるための手段のひとつとして「コミュニティ」が最適なのではないかと考えました。
リアルな場であるSBPと、デジタルな場であるClub fibona。この両方を融合させ、生活者の方々と直接つながることで、より深く、スピーディーに共創を具現化させるため、2025年5月にオンラインコミュニティClub fibonaを立ち上げて、運営を開始しました。

——Club fibonaが大切にしていることはどのようなところでしょうか?

 

小堀:
私たちはClub fibonaメンバーの皆さまを、共に価値を作っていくパートナーだと考えています。言い換えればこれまでのマスマーケティングのように、企業が情報を一方的に発信してお客さまに買ってもらうという関係性ではない存在です。そのような生活者の皆さまとのフラットな関係性をClub fibonaでは大事にしています。

——Club fibonaの外部パートナーであるコミューン株式会社は、どのように関わっているのですか?

 

江崎:
私たちコミューンは、コミュニティサクセスプラットフォーム「Commune」 の提供をはじめ、ブランドとお客様の信頼関係を育むコミュニティづくりやコミュニケーションに関するさまざまなご支援をしています。Club fibonaでは、オンライン上のコミュニティプラットフォームの提供に加え、そもそものコミュニティの目的や方向性をはじめ、ゼロベースの設計段階から伴走してきました。現在は、定期的に小堀さんとディスカッションをしながら、コミュニティ運営をサポートさせていただいています。

 

小堀:
コミューンさんとご一緒するにあたり最初にお伝えしたのは、「Club fibonaを単なるプロモーションの場にはしたくない」ということでした。小さな規模でもいいから、血の通った「共創」のあり方を模索したい。それはいまも心に強くある思いです。

 

江崎:
一般的な“ファンコミュニティ”の場合、すでに広く普及している商品のファンが集まることが多いのですが、fibonaの商品の場合は、生活者と商品の価値を共創していくことを目的としているので、販売数や購入できる場も限られています。これまで私たちが培ってきた正攻法が通じないような特殊な条件下で、どうコミュニティを作っていくのか。私たちにとっても非常にチャレンジングで、だからこそやりがいやおもしろさを感じています。

「共創」に必要なのは、“対等な関係性”

 

——Club fibonaにはどうしたら参加できますか? 参加条件などはあるのでしょうか?

 

小堀:
現在は、どなたでも参加できるオープンな形にしています。Club fibona公式サイトから登録するだけで、Club fibonaの会員として投稿やイベントに参加することができます。
実は立ち上げ当初、有料の会員制にすることも想定していたのですが、半年間のプレローンチ期間を設けて、有料化すべきかどうかを慎重に判断することにしたんです。当時は、商品購入者の方々を中心にアクセスできるよう、入り口も絞っていました。

 

——最終的に有料ではなく、無料のオープンな形を選んだのはなぜですか?

 

小堀:
最大の理由は、やはり「対等な関係性を大事にしたい」という原点に立ち返ったからです。お金を払って場を「提供する側/される側」という構造になったとき、無意識の上下関係が生まれてしまうのではないか、という懸念がありました。
私たちが目指しているのは、fibonaと生活者が同じ目線で、フラットに新しい価値を作っていく「共創」の場です。そう考えたとき、参加のハードルを設けて「場を売る」ような形は、自分たちが本当にやりたいこととは少し違うのではないか、という結論に至りました。

 

江崎:
「上下関係を作らない」というのは、コミュニティを健全に育てるうえで非常に重要な視点です。そのおかげで、いまのClub fibonaには、ブランドへの純粋な好奇心や共感を持った方々が、自由に集まれる空気感が醸成されていると感じます。

雑談や茶話会、イベントが生んだ「対話」の場

 

——スタートから半年を過ぎました。具体的にどんな取り組みをされてきたのでしょうか。

 

小堀:
大きく分けて3つの柱があります。1つ目は、雑談掲示板のような「Chit-Chat」。「美」にまつわる話や情報の交換を自由に行う場です。2つ目は「Project(※)」。特定の商品に対するフィードバックを募集したり、一緒に何かを創り上げたりする公募型の活動です。そして3つ目が、SBPで開催する「Event」です。

(※2026年3月末より“Activity”として表記を変更。)

——雑談掲示板「Chit-Chat」では、どのような会話が交わされているのでしょう。

 

小堀:
fibonaや資生堂社の「この商品を使ったよ」といったお話はもちろん、他社さまの商品の話や、インナービューティー、ヨガ、日々のルーティンなど、多角的な「美」にまつわる情報交換が起きています。
資生堂社は単なる化粧品会社ではなく「ビューティーカンパニー」を掲げていますので、日常のあらゆる角度からの投稿を歓迎しています。最近では、「SBPのカフェに行きました!」など、Club fibonaメンバーが自発的に投稿してくださることも少しずつ増えてきました。

 

江崎:
運営側からも「美容のために気をつけていることは?」など、気軽に参加できるテーマを投稿して、交互にコミュニケーションが生まれるように意識しています。運営担当としては、基本的にすべての投稿に必ずリアクションを返すようにしています。地道ですが、この双方向のやり取りができる状態を継続していくことが、コミュニティにとって最も大事な部分です。

——では、「Project」はどんな取り組みですか?

 

小堀:
たとえば「茶話会(さわかい)」というものがあります。これは商品に関するオンラインインタビューに近いものですが、あくまで「膝を突き合わせてお茶を飲むように語り合おう」というスタンスで開いています。商品企画を担当した研究員とClub fibonaメンバーがフラットに対話するような場ですね。

 

——参加者や研究員からは、どのような声がありましたか?

 

小堀:
Club fibonaメンバーからは「研究員さんと直接話せるなんて滅多にない機会でうれしい」「開発の裏側を聞けて、より商品への愛着が湧いた」といった声をいただいています。研究員側も、普段はエンドユーザーの方と接する機会が少ないため、「自分が手がけた商品の感想を直接聞けることが、日々のモチベーションになる」ととてもポジティブな刺激を受けています。マーケティング的な「調査」ではなく、血の通った「対話」を大切にしているので、毎回時間が過ぎるのがあっという間です(笑)。

——SBPでの「Event」は、さらに踏み込んだことを実施されているそうですね。

 

江崎:
これまでに、オンラインで1回、オフラインで3回の計4回イベントを実施しました。直近で開催したのは、発売前の新商品に関するオフラインイベントです。SBPにお越しいただいた会員の皆さんに、完成間近の試作品を試していただきました。ワークショップ形式で研究員と参加者がグループになって語り合ったり、出てきた意見をグループごとに発表していただいたりもしました。

 

小堀:
発売前の商品に関するイベントは初めての試みでしたが、研究員にとって、最終的に商品をどう仕上げていくべきかという点で大きなヒントになったようです。

 

江崎:
さらに参加者の皆さんからは、「世に出ていない商品をいち早く手に取れる経験は新鮮だった」「資生堂がより身近に感じられ、信頼性が高まった」といった嬉しい感想をいただいています。

小堀:
販売後の商品に関するイベントも開催しましたが、そのときは研究者が商品の背景にある話をしたり、参加者の方々に商品の使用前・使用後の変化を体感していただいたりしました。共創の第一歩は、「参加している実感」を得ることだと思っています。そのために定期的にイベントを重ねることは有効だと感じています。

 

江崎:
リアルイベントならではの良さがある一方、予定があったり遠方に住んでいたりして参加できない方もいらっしゃいます。そういう方たちにも当日の様子が感じられるように、必ず開催後にイベントレポートをClub fibonaに投稿するようにしています。

 

小堀:
イベント前の設計からイベント後のレポートまで、この部分はコミューンさんに本当にご尽力いただいています。

資生堂社初のオンライン共創コミュニティとして

 

——Club fibonaを運営するうえで、チャレンジングだったところは?

 

小堀:
一番の挑戦は、資生堂社が150年以上の歴史の中で、共創コミュニティが一度も経験したことがない試みだったことです。もちろん、お客さまと繋がる仕組みはこれまでにも数多く存在しましたが、今回のようにオンラインで「双方向」に深く対話し、一緒に価値を作る「共創」コミュニティは初の試みです。前例がなく、歩むべき轍(わだち)がどこにもないなかで、いかにしてこの構想を具現化していくか。その手探りのプロセスこそが最大のチャレンジですね。

江崎:
私たちにとっても、Club fibonaはコミュニティ作りの定石が通用しないプロジェクトであり、そのあり方自体が大きな挑戦になっています。多くの方を巻き込みながら、いかにfibonaらしく居心地のいい場所を作っていくか。いまも日々模索している最中ですが、小堀さんたちとフラットで良い関係性を構築できているからこそ、正解のない問いにも前向きに取り組めています。これからも一緒に、Club fibonaをより一層盛り上げていきたいです。

 

目指すのは、「シェアド・オーナーシップ」のコミュニティ

 

——Club fibonaでの共創について、今後の展望や抱負があれば教えてください。

 

小堀:
私たちはClub fibonaの運営においては「シェアド・オーナーシップ(共同所有)」を目標に掲げています。Club fibonaというコミュニティは資生堂社だけのものではなく、参加してくださるみなさまのものだと思っています。いまは運営側から発信することが多いのですが、将来的には私たちが旗を振らなくても、Club fibonaメンバーの方々が自発的に「もっとこうしようよ」と旗を振り、新しいプロジェクトが動き出すような場にしたいです。

 

江崎:
開始から半年以上が経ったいま、Club fibonaメンバー同士の横のつながりも生まれています。イベントの後、参加者同士がカフェで「オフ会」を開いているのを見たときは本当に嬉しかったですね。そうしたClub fibonaメンバーの横のつながりが広がるきっかけも、さらに作っていきたいと思います。

 

——最後に、この記事を読んだ方にメッセージをお願いします。

 

江崎:
「共創」と聞くとハードルが高く感じられる方もいるかもしれませんが、「研究員の思いをのぞいてみよう」というくらいの気軽な気持で参加してほしいですね。もちろん美容に詳しくない方でも歓迎です。ほかのSNSには流れないディープな情報や、研究員の熱い思いに触れるだけでも、きっと新しい発見があるはずです。

 

小堀:
Club fibonaは、まだ発展の途上にあります。これからもっと多角的な視点を持つ方々に参加していただき、双方で循環するエコシステムを広げていきたいと思っています。みなさまと一緒に「世の中にないもの」を作るプロセスを形にしていけたら。ぜひ、Club fibonaの扉を叩いてみてください。

 

Club fibona

https://clubfibona-members.jp/

 

(text: Ikumi Tsubone photo: Yuko Kawashima  edit: Kaori Sasagawa)