fibona Lab

「スキンアクセサリー™」のAR体験イベント開催、
TOPPANと共創した「fibona Lab」の新たな場づくり

2026.01.22

「スキンアクセサリー™」のAR体験イベント開催、
 TOPPANと共創した「fibona Lab」の新たな場づくり

資生堂研究所のオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」が発信する「世の中にない」価値を共創するビューティープロダクツとして、2025年11月に「スキンアクセサリー™」の新デザイン2種が発売された。
「スキンアクセサリー™」は、肌上に人工皮ふを形成する「Second Skin」技術を応用し、新たな自己表現を可能にする商品だ。2025年12月中旬には、Shiseido Beauty Park 1階の「fibona Lab」にてAR技術を駆使したバーチャルメイク体験イベントを期間限定で開催した。

fibona Labのブースは、ただ“モノを売る場”にとどまらない。訪れたお客さまと「驚き」や「実感」を分かち合う、新たな“ビューティー体験”を届けようとしている。
AR体験イベントの共創パートナー、TOPPAN株式会社の鉄矢俊一さんとfibonaメンバーの柳原茜、會津容子の3人に、イベントの舞台裏とテクノロジーでつながる共創の可能性について話を聞いた。

 

リアルとデジタルが融合したAR体験イベント

 

——まずは簡単な自己紹介と合わせて、AR体験のイベントを共創することになった経緯を教えてもらえますか。

 

鉄矢:
TOPPANは、長年培ってきた印刷技術をベースに、情報の届け方をデザインすることで企業の活動を支えてきた会社です。私は現在、テクノロジーを通じた新しい購入体験や、お客さまとの深いつながりを生むためのタッチポイントづくりを通して、化粧品売り場にデジタル技術を融合した「新しい店舗体験」を創出しています。

TOPPANの鉄矢俊一さん

TOPPANの鉄矢俊一さん

柳原:
私はfibona商品の施策やコミュニケーションなどを主に担当しています。今回のイベントでは、fibona Lab店頭での企画を中心に関わりました。fibonaの商品はどれも個性が強いので、それに合わせて店頭のあり方もゼロから考え、お客さまが商品の世界観を直接感じられるような場づくりを追求しています。

 

會津:
私は主にホームページの更新、SNSの投稿そしてコミュニティの運営などを担当しています。今回はSNSでの発信に加えて、お客さまがスムーズに体験できるような動線作りや、店頭に置くパネルなどの制作物をサポートしました。

fibonaメンバーの會津容子

fibonaメンバーの會津容子

柳原:
今回の共創のきっかけは、TOPPANさんから技術を紹介いただいたことでした。店頭での展開だけでなく、fibonaは常に新しい技術を探していますが、ご提案いただいた中で「スキンアクセサリー™」と相性がよさそうなものがあったことから、ARの体験イベントを絡めた店頭づくりをご一緒することになりました。

 

──AR技術を駆使したバーチャルメイク体験イベントとのことですが、どのような体験を設計されたのでしょうか?

 

鉄矢:
fibona Lab店頭にあるタブレットに顔を映すと、AIが骨格や表情をリアルタイムで分析し、すぐに3D化された新デザインの「スキンアクセサリー™」が肌の一部のようにフィットした状態を見ることができるというものです。実際に「スキンアクセサリー™」を使っているかのような体験をしていただけます。
今回はバーチャルメイクの分野で世界的な技術をもつパーフェクト株式会社のソリューションを活用しました。また、「スキンアクセサリー™」のパーツは一点ずつ高精細に撮影し、微細な質感を実物と遜色のないレベルまで精度を高めて再現しました。

柳原:
新デザインは、蝶やバブルなどのモチーフが入った「キュート系」と、メタルパーツをメインとした「クール系」の2種です。バーチャルメイク体験では、それぞれお顔に乗せるボリュームの違いで2パターンずつ、全部で4つの3Dモデルをつくりました。バーチャルメイクをした画像はスマホにダウンロードできるので、その画像やイベントの様子をSNSにアップしてくださった方には、ささやかなプレゼントも用意しました。

バーチャルメイク体験は「ワクワクのスイッチ」を入れる装置

 

──AR体験ができるブースを作るうえで、特に意識したところはありますか?

 

柳原:
fibonaの商品は、世に出して終わりではなく、お客さまからのフィードバックをいただいて一緒に磨き上げていく「共創プロダクト」という考え方を大切にしています。そのため店頭でも、ただ商品を買っていただくだけでなく、お客さまに共創のプロセスを知っていただいたうえで、「フィードバックしてみたい」と思ってもらえる体験をデザインしたいと考えていました。
とはいえ、「意見を届ける」という行為は、お客さまにとっても相応のパワー(エネルギー)が必要なことなので、心から共感したり、深い興味をもったりしない限り、うまくつながらないですよね。だからこそ、まずは理屈抜きにワクワクして「すごい!」「おもしろい!」と感じてもらえる体験を提供することを一番の目的にしました。ARのバーチャルメイク体験は、その「ワクワクのスイッチ」を入れるための装置です。

fibonaメンバーの柳原茜

fibonaメンバーの柳原茜

會津:
より多くの方に届くように、店頭での視覚的なアプローチにも工夫を凝らしました。イベントを知らずにShiseido Beauty Parkに来た方でも、何が行われているのかが一目でわかるように大型パネルの設置やスムーズな体験へ誘導するポップを制作しました。心理的なハードルを下げ、自然に体験へ入っていただける動線作りは、今回の大きなポイントになったと思います。

 

柳原:
また、開催時期も戦略的に選定しました。Shiseido Beauty Parkのある横浜・みなとみらい周辺はイベントが多いエリアなので、近隣の催しをリサーチし、「スキンアクセサリー™」に興味をもっていただけそうな方が多く集まるタイミングを狙って実施しました。

 

會津:
このエリアには「ぴあアリーナMM」や「Kアリーナ横浜」といった大型の音楽ライブ会場も隣接しています。そこでInstagramの投稿に会場名や施設名のハッシュタグを加えるなど、ライブを訪れる方の目にも留まるような工夫も取り入れました。

「体験する場」としての可能性

 

──実際にARの体験イベントを実施してみて、どのような反応がありましたか?

 

鉄矢:
予想外だったのは、通りすがりの方がタブレットに映る自分の姿を見て、パッと立ち止まる率が非常に高かったことです。どのくらい興味を持っていただけるかは実施してみないとわからない部分もあったのですが、ブースの前を通るだけで気づいてくださることがわかってよかったです。

 

柳原:
「スキンアクセサリー™」は、「肌のためのアクセサリー」としてメイクをファッション感覚で楽しむ商品です。しかしお客さまにとってはまだ馴染みのない新しいメイクでもあるため、実際に肌につけていただくまでのハードルが高いという課題がありました。これまでアクリルプレートに「スキンアクセサリー™」を貼り、顔にかざして楽しむ仕掛けも用意していましたが、ARを使ったバーチャルメイクは「鏡を見る」という日常的な動作の延長で体験できます。何もせずに通り過ぎてしまう方はほぼいなかったですね。幅広い年齢層の方が楽しんでくださっていたのが印象的でした。

會津:
「映りが良い!かわいい!」と、思わずその場でテンションが上がるお客さまも多かったですね。実際に、「本当につけているみたいで、イメージしやすい」「色んな種類を試せて楽しい」といったうれしい感想もいただきました。瞬時にお客さまのお顔に合わせたバーチャルメイクがタブレットに映し出されるので、その「実感」が、商品購入にもつながったと聞いています。

 

柳原:
お客さまがどのような体験に惹かれ、どのような行動をとるのか。TOPPANさんとの共創イベントを通じて、貴重な知見を得ることができました。これはfibonaにとって、そして店頭のスタッフにとっても大きな収穫だったと感じています。

お互いに高め合う「共創パートナー」という関係

 

──fibonaとTOPPAN、共創パートナーとしてそれぞれの印象はいかがでしたか?

 

鉄矢:
fibonaのみなさんは、新しい技術をご紹介したときに、それをただ「吟味する」だけじゃなくて、「どう遊べるかな?」「どう使ったらもっとおもしろくなるかな?」という視点で広げてくださるんです。まるで新しいおもちゃを見つけたときのようにワクワクしながら、今の活動とどう掛け算するかを考えてくれる。その前向きな空気感は、私たちにとってもすごく新鮮でした。
また、普通なら半年、1年くらいかかるようなイベントの企画を、実質2〜3カ月というスピード感で実現できたことにも驚きました。1週間のテスト展開という形で、柔軟にクイックに挑戦させていただける環境は、技術を提供する側にとっても貴重な場になったと思います。

柳原:
私たちにとって、外部の共創パートナーは「救世主」のような存在なんです。世の中にない新しい体験を生み出そうとするとき、自社にないテクノロジーを掛け合わせることは欠かせません。また、TOPPANさんのように「まずは小さい規模から、チャレンジとしてやってみましょう」と言ってくださるスタンスは、私たちにとってありがたく心強いです。

 

會津:
アジャイルで進めるfibonaのプロジェクトのスケジュールはいつもタイトなのですが(笑)、TOPPANさんのように、こうしたスピード感を理解し合えるパートナーさんとものづくりができることが、プロジェクトの成功において大切な要素だと、今回のイベントを通して改めて感じられました。

 

——当初からオープンイノベーションを掲げるfibonaとしては、外部パートナーとの共創をどのように捉えていますか?

 

柳原:
fibonaはお客さまとプロダクトをつくっていく「共創」をとても大切にしています。自社にはない技術や知見を持っている他社さまとの共創もそのひとつで、これからも積極的にやっていきたいです。
「自分たちの技術を、実際の市場で試してみたい」と考えている新規事業の方やスタートアップの方は多いと思います。そんな熱意のある方々と手を取り合って、お互いに高め合えるような良い関係を築きながら、お客さまの心が動くような体験をたくさん生み出していきたいですね。

 

──最後に、今後のfibona Labへの抱負や共創への期待について教えてください。

 

會津:
これからも、fibona Labの「ここでしかできない体験」を大切にしていきたいです。商品を買っていただくだけでなく、お客さまからの「こうしてほしい」という生の声に耳を傾け、それを商品化や再販につなげていけるような場を、今後もつくっていきたいです。

鉄矢:
あらためて、fibona Labは「商品購入の場」である以上に、お客さまとのコミュニケーションを通じてニーズを引き出す場であることを感じました。今回、何人が体験し、どのデザインが選ばれたのかといったデータ計測もしていますので、そうしたお客さまの「声にならないニーズ」を可視化する面についても今後、fibonaさんにご協力していけると思っています。

 

柳原:
それはぜひ知りたいですね。今後も、TOPPANさんにいろいろとご協力いただきながら新しいチャレンジを続けていけたら嬉しいです。お客さまが足を運ぶたびに新しい発見がある、そんな活気ある店頭づくりを通じてfibonaをさらに盛り上げていきたいです。

 

(text: Ikumi Tsubone photo: Yuko Kawashima edit: Kaori Sasagawa)