fibona Lab

「スキンアクセサリー」が叶える、“メイクを超えた変身”
研究員の挑戦が商品になるまで

2025.1.15

資生堂研究所のオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」が発信する、「世の中にない」を共創するビューティープロダクツより、肌と一体化し凹凸を補正する人工皮ふを肌上に形成する資生堂の「セカンドスキン」技術(以下、セカンドスキン)を応用した「スキンアクセサリー」を9月20日にMakuakeにてローンチした。

資生堂の最先端テクノロジー「セカンドスキン」を活かした商品「スキンアクセサリー」によって、どんな新しいビューティー体験が生まれようとしているのか。

資生堂の研究員によって構成された「スキンアクセサリー」開発チームの6名に、商品化までのストーリーと挑戦について聞いた。

「スキンアクセサリー」の開発チーム
(写真右から)
プロジェクトリーダー久保田俊、内山雄也、貞神喜郎、林田啓佑、近藤倭伽那、柳原茜

肌に纏う「スキンアクセサリー」誕生

──「スキンアクセサリー」プロジェクトでの、みなさんの担当を教えてください。

久保田:
私はみらい開発研究所の基礎研究チームに所属していて、スキンアクセサリーのプロジェクトリーダーを務めています。

貞神:
私も久保田さんと同じく、みらい開発研究所の基礎研究チームにいます。今回のプロジェクトでは技術開発に関わりました。

林田:
私は、ポイントメイクアップの開発が専門です。元々スキンケアの技術として採用されていたセカンドスキン技術をメイクアップに応用するための開発をしていた流れで、プロジェクトに参加することになりました。

近藤:
私もポイントメイクアップの開発をしています。スキンアクセサリーでは、林田さんと一緒に処方の組み合わせを考えたり、使用するシーンや使用感などお客さまの視点に立った提案をしたりしました。

内山:
私は、容器などの外装を担当しています。実は、私がカメラマンとなり、妻のコスプレを撮影しているんですけど、「スキンアクセサリー」はコスプレの際に、とても便利だなと思っていました。そうした実際に使う側とし| て、このプロジェクトにも携わりたいと思っていたので参画させてもらいました。

柳原:
私はプロジェクトマネージャーとして、プロジェクトが円滑に進むように全体の進行を管理しています。

fibonaでの商品開発では、研究員がさまざまな機能を担い、商品をローンチするという、この体制自体が特徴でもあります。fibonaの商品開発を進める上で、大変なこともたくさんあったと思うのですが、課題が発生してもみ| なさんのプロフェッショナルな部分を活かしながら、いつも前向きに取り組んでくれています。

──Makuakeでリリースされた「スキンアクセサリー」は、どんなものが入ったセットなのでしょうか?

久保田:
柔軟性のある透明な膜をつくるジェルとミスト、アクセサリーパーツがセットになっています。ジェルを肌に塗り、その上に好きなパーツを乗せて、ミストを吹きかけると膜ができて固定できます。表情を動かしても取れにく| く、使い終わったら剥がしやすいのも特徴です。

柳原:
アクセサリーパーツのパターンは、大きく3種類あります。幾何学的なパターン、ドライフラワー、ホログラムの蝶のパーツをモチーフにしたものがあり、それぞれに小さなクリスタルやパールも入っています。クリエイティブ| ディレクターの方にプロフェッショナルアドバイザーとしてご協力いただきながら、ユニセックスで楽しめて、いろいろなメイクアップパターンを楽しめる内容にしています。

スキンアクセサリー (A)

スキンアクセサリー (B)

スキンアクセサリー (C)

これまでにない自己表現、「透明を楽しむメイク」

──もともと資生堂の先端技術「セカンドスキン」を活かした製品とのことですが、どうして「スキンアクセサリー」というネーミングになったのですか?

久保田:
セカンドスキンは、2剤を混ぜて透明な人工皮ふを作る技術です。もともとは、目のたるみやほうれい線など、気になる肌の部分を、目立たなくさせる技術として活用していました。

そこから、研究所のメンバーとのディスカッションを重ねて、「“メイクを超えた変身”や、“これまでにない自己表現”を可能にするテクノロジーなのではないか」と気づいたことが、「スキンアクセサリー」プロジェクトの原点になっています。

久保田:今はファッションの部分では自己表現ができる時代になった一方、顔に対してはまだ十分ではないと感じています。メイクは色と質感は表現できるのですが、形までは大きく変えられません。セカンドスキンの技術を使えば、その壁を超えていくことができます。

なりたい自分を服やウィッグ、カラコンなどで表現するように、顔はもちろん、肌自体をアクセサリーとして立体的に拡張し、自己表現の幅を広げていく。それを表すために「スキンアクセサリー」と名付けました。

スキンアクセサリー(C)の仕上がりパターン例1

──開発にあたり、ハロウィンイベントなど、実際にセカンドスキンをお客さまに使っていただく機会をつくり、そこで得た声も商品化のヒントになったと聞きました。

近藤:
セカンドスキンの技術には、色を重ねて楽しむなどいろんな使い方があるのですが、他のメイクにはない特性として、「透明であることを楽しめるメイク」の可能性を感じたのが、2024年に実施したハロウィンイベントでした。

参加者がアクセサリー感覚で指にパーツをくっつけたり、耳にピンポイントで花を付けていたり、自由に自己表現されている様子は、今の「スキンアクセサリー」につながる大きなヒントになりました。

林田:当初は膜をつくる2剤はどちらもジェルだったのですが、膜を固める2剤目はミストの方が使いやすくて、きれいに仕上がるんじゃないかということで、「スキンアクセサリー」ではミストを採用しています。その気づきも、イベントを通じて得たものです。

貞神:
私はイベントの参加者からのフィードバックをもとに、どういうニーズがあるのかを分析しました。さまざまな意見があるなかで、最終的により多くの人が楽しめて、この技術でしか叶えられないポイントを兼ね備えたものとして、「透明を楽しむ」という点に着地しました。

ハロウィンイベントを企画したメンバー

「151」の意味は? 既存から「はみ出た」パッケージデザイン

──開発の面でこだわった部分はどこですか?

林田:
ミストへの変更ですね。2つの基剤を組み合わせて膜にするため、一方を変えればいいという話ではなく、両方の開発が必要でした。貞神さんには使用する基剤の相談をし、近藤さんには何度も試作品を使ってもらいフィードバックをもらいながら、夜な夜な試作を繰り返しました(苦笑)。

林田:
今回の「スキンアクセサリー」は、パッケージに「09-151」と明記されているのですが、この「151」は最終的な試作の数です。

貞神:
肌にものを付けるための技術は世の中にすでにあるのですが、柔軟性のある膜を作れることがセカンドスキンの特長です。なぜなら、特に顔は表情による動きが大きく、硬い膜だとすぐに剥がれてしまうからです。この柔軟性を維持しながら、肌に優しく、肌にものが密着する組成の開発も林田さんと一緒にこだわった部分です。

──パッケージも特徴的で、印象に残りますね。

内山:
外装の形は一般的なものからはみ出たチャレンジングな商品であることを、色の部分はさまざまな表現ができることをイメージしてデザインされています。基剤容器のラベルも全面張りではなく、一部が飛び出た形にしました。

一般的に工場での量産の場合、こういった飛び出たものは難しい商品です。でも今回は、少量生産でfibonaというチャレンジングな取り組みだから「やりましょう」と言ってくれて実現できました。

久保田:
細かい工夫もあります。メインの容器には各キットにアクセサリーパーツが2袋入っていますが、中枠を外してパーツを移し替えると、メイン容器そのものをお道具箱のように使うことができます。

また、持ち運べるサイズになっているのもポイントで、最低でも10~15回程度使える容量にしました。まずは“ハレの日”から使ってもらい、日常に落とし込んでもらえたらいいなと思っています。

会話が生まれる「スキンアクセサリー」、新たな文化の可能性

──どんな方に使っていただきたいですか。また、みなさんのおすすめの使い方などはありますか?

内山:
最近のことですが、小さいアクリルキーホルダーを頬につけてライブに行ったんです。そのときに“推し“に気づいてもらえてファンサービスをしてもらえて。すごくワクワクして、楽しくて、めちゃくちゃ良かったです。1日中、汗をかいても剥がれることもありませんでした。おすすめの使い方です。

林田:
複数人で同時に使えるのが1番のおすすめポイントです。ハロウィンイベントの時も友達同士や親子で一緒に楽しんでいたのが印象的でした。例えば、みんなでイベント前に集まり、「スキンアクセサリー」をしあうのもいいですよね。

貞神:
私もハロウィンのイベントの時に、“一緒に作る空間”が生まれているのがすごいいいなと感じていました。「スキンアクセサリー」をきっかけに、コミュニティができたり、発達していったりするといいなとずっと思っています。

一方で、オタク気質の方やDIYが好きといったこだわりを持っている方に、自分だけの使い方を探索してほしいです。

近藤:
私も最初のきっかけとしては、テーマパークなどに友達と出かけるタイミングが使いやすいかなと思っています。そこからだんだん肌に直接アクセサリーをつけることが日常になっていけばおもしろいですね。

柳原:
私はもともと演劇をずっとやっていたのですが、舞台メイクをすると、ぐっと役に入り込めるんです。「スキンアクセサリー」は、その意味で舞台メイクに近いなと感じていて、使うことで普段の自分じゃない、“今まで知らなかった自分”を引き出すきっかけになるんじゃないかと思っています。それをお客さまにぜひ実感していただきたいです。

久保田:
チームメンバーのみなさんが言ってくれたことに加え、既存のメイクによる自己表現で、物足りなさを感じている方にも使っていただきたいですね。「スキンアクセサリー」は、使いやすさがありながらも、拡張性のある商品なので、自分で考えながら使い方を工夫して表現していきたい人にも向いていると思います。

──最後にチームを代表して、プロジェクトリーダーの久保田さんが「スキンアクセサリー」を通じて描く未来についてお聞かせください。

久保田:
私は「スキンアクセサリー」を通じて、新しい文化を作っていきたいと思っています。これまでになかったカテゴリーの商品なので、まずは“ハレの日”のアイテムとして使っていただく方が多いと思いますが、少人数でも「こういう商品を待っていたんだ」と深く心に刺さる人もいると信じています。

これからは、お客さまが正解を作っていく時代です。一人ひとりのクリエイティビティが発揮され、いろんな使い方をしていただくなかで日常となり、文化になっていく。そういう世界を見たいと思っています。

「スキンアクセサリー」は、ローンチをしたあとも一緒にお客さまと育てていける余白のある商品です。そのための仕組みも今後作っていく予定です。お客さまとどんな形でコミュニケーションしていけるのか、我々も楽しみにしています。

text: Ikumi Tsubone
photo: Umihiko Eto
edit: Kaori Sasagawa